看護師が解説!中性脂肪の治療に使われる薬とその効果、副作用や治療期間、費用は?

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1964_187中性脂肪が高めと診断された場合、まずは食生活の改善や運動療法を行います。

経過観察し、生活習慣の改善が難しい場合や、努力しても数値が改善しない場合は、動脈硬化の進行や膵炎を発症する恐れがあるため、薬物療法を行うことになります。

どんな薬が使われるのか、その効果や副作用、治療期間、気になる費用も含め看護師がご紹介します。

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高中性脂肪血症で使われる薬

1964_183高中性脂肪血症で使われる薬には、フィブラート系薬、ニコチン酸誘導体、EPA製剤があります。

それぞれの薬効と副作用、注意点のまとめです。

フィブラート系薬

中性脂肪低下に効果が優れており、治療の第一選択(一番最初に試す薬)になります。

<薬効>
  1. 肝臓での中性脂肪やコレステロールの合成を阻害する
  2. 「リポ蛋白」(中性脂肪、コレステロールを含んでいる)を分解する「リポ蛋白リパーゼ(LPL)」という酵素を活性化する

LPLの作用で「リポ蛋白」内部の中性脂肪の分解を促し、中性脂肪を下げる 。

※結果として、中性脂肪を下げることで、HDL(善玉コレステロール)も増加するというよい効果もついてきます。

<副作用>
1964_92中性脂肪低下に効果が高いフィブラート系薬ですが、非常にまれに副作用が見られます。

  • 横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう):手足のしびれ、脱力感、倦怠感、筋肉痛、腎障害による赤褐色尿など
  • 肝機能障害:倦怠感、食欲不振、黄疸など

特に横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)は、横紋筋(横しまのある筋組織。骨格筋と心筋がこれに属します)の筋肉細胞が破壊される病気で、重症の場合は生命の危険もある副作用です。

このような症状が見られた場合は、直ちに医師や薬剤師に連絡するようにしましょう。

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<使用上の注意点>
  • スタチン系薬(コレステロールを下げる薬)とは原則的に併用しない
  • 肝障害、胆のう疾患、胆石症、腎障害のある人は使用できない
  • 妊娠中の人は使用できない
<主な薬剤名>
  • ベザフィブラート(製品名:ベザトールSR、ベザリップ)
  • フェノフィブラート(製品名:リピディル、トライコア)
  • クロフィブラート(製品名:ビノグラック)
  • クリノフィブラート(製品名:リポクリン)

ニコチン酸誘導体

50年以上前から血清脂質を下げる効果が認められ、よく使われている薬剤です。

<薬効>

1.脂肪組織での脂肪分解を抑制する

肝臓へ戻る脂肪酸を減らし、肝臓での中性脂肪合成を抑制する

2.リポ蛋白リパーゼ(LPL)酵素を活性化する

LPL の作用で、リポ蛋白内部の中性脂肪の分解を促し血液中の中性脂肪を下げる

中性脂肪を下げることで、HDL(善玉コレステロール)を増加させる

3.末梢血管を拡張し、血行を良くする

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<副作用>
  • 顔面紅潮、ほてり、かゆみ
  • 発疹、じんましん
  • 食欲不振、吐き気

ニコチン酸はビタミンB の一種であるため、副作用が少なく、長期服用にも適しています。

末梢血管の拡張作用で顔や皮膚の紅潮が見られることがありますが、多くの場合で心配はないとされています。

  • 重度の低血圧や出血しやすい人は使用できない
  • 糖尿病、痛風、肝臓病、消化性潰瘍、透析を受けている人などは十分注意が必要となる
  • <主な薬剤名>
    • トコフェロールニコチン酸エステル(製品名:ユベラN)
    • 二セリトロール(製品名:ペリシット)
    • ニコモール(製品名:コレキサミン錠)

    EPA 製剤

    イワシやサバなどの青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸と同じ成分のEPA(イコサペント酸)が有効成分です。

    <薬効>
    1. 肝臓での脂質の合成、分泌を抑制する
    2. リポ蛋白の代謝を促進させ、中性脂肪の分解を促し血液中の脂質を低下させる
    3. 血小板の凝固作用を抑え、血液が血管内で固まりにくくする
    4. 血管壁に入り込み、血管の弾力性を保つ
    5. 抗血小板作用と脂質代謝改善作用があり、動脈硬化症にも使用される

    <副作用>
    1964_185副作用は少ないですが、次のような症状が出る場合があります。

    • 出血しやすくなる(歯肉出血、鼻出血、皮下出血、血尿、過多月経など)
    • 胃部不快感、吐き気
    • 肝機能障害(倦怠感、食欲不振、吐き気、かゆみ、黄疸、褐色尿など)
    • 発疹、かゆみ

    頻度はまれですが、特に肝機能障害の症状が現れた場合は、速やかに受診する必要があります。

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    <使用上の注意点>
    • 空腹時では吸収が悪いため、食後すぐに服用する
    • 出血が止まりにくくなるため、出血しやすい人、血友病の人などは使用できない
    • 抗血栓薬(アスピリン、ワルファリンなど)との併用は、出血に更に注意が必要となる
    • 手術や抜歯など出血を伴う治療をする際は、事前に医師によく相談しておく必要がある
    <主な薬剤名>
    • イコサペント酸エチル(製品名:エパデール)
    • オメガ3脂肪酸エチル(製品名:ロトリガ)

    もっと詳しく:
    中性脂肪値を下げるEPA~効果のメカニズムと摂取量、レシピ

    薬物療法の治療期間は?

    1964_186高トリグリセリド血症の薬物療法は、長期に渡ることが多いです。

    服用を始めてすぐ数値が下がることがありますが、一時的なことが多く、服用を止めると再度上昇することがほとんどです。

    概ね3ヶ月ほどで効果が安定し、6ヶ月~1年ほど服用すると、数値が落ち着いてきます。

    薬を始めて3ヶ月は毎月受診し、薬の効果と副作用の有無などを確認します。

    中性脂肪の数値が適正範囲内に落ち着いて来たら、受診間隔も3 ヶ月に1 回程度になります。

    食事療法、運動療法を薬物療法と併行して行うと、数値改善に効果が高く、適正数値を維持しやすくなります。

    適正数値が維持できれば、薬の減量や中止までに持っていくことができます。

    健康診断結果の見方。中性脂肪の正常値・異常値とは?

    薬物療法の費用は?

    以下に各薬剤の1ヶ月分の薬剤料をまとめます。

    フィブラート系薬:
    67.6円~75.8円/日 ×30日= 2,000円~2,200円/月

    ニコチン酸誘導体薬:
    17.4円~30.6円/日 ×30日= 520円~ 920円/月

    EPA 製剤:
    210.8円~219.6円/日 ×30日= 6,300円~6,600円/月

    1964_181この金額は薬価(国で定めた薬の法定価格)から計算しました。

    ここから自己負担金(3割負担など) を計算し、支払うことになります。

    たとえばフィブラート系薬30日分2,000円であり、3割負担の保険料であれば、薬代の自己負担額は600円程度となります。

    ジェネリック医薬品を利用すると、これらの1/2~1/3程度の価格になりますので、積極的に選択していくのも良いでしょう。

    これに病院での診察料や検査料が入るため、毎月となると負担も大きくなりますが、治療をしなければ動脈硬化が進み、心筋梗塞や狭心症などの重大な病気につながってしまいます。

    高中性脂肪血症であると診断を受けたなら、しっかり治療することが、大きな病気の予防につながり、将来的な生命のリスクや高額な治療費を抑えることにつながります。

    まとめ

    1964_182サイレントキラーと呼ばれる高中性脂肪血症

    痛い、つらいなどの自覚症状に乏しいため、治療を後回しにしてしまう方が多い病気です。

    診断を受けた場合は、食事、運動療法もしっかり行いながら、薬物療法も医師の指示に従い、確実に行っていきましょう。

    もっと詳しく
    看護師が解説!高中性脂肪血症の診断と治療方針

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    監修者 山浦 真理子医師


    帝京大学大学院卒業後、世界共通の医学博士号であるPh.D.を取得。米国ワシントンD.C.とニューヨークへ留学経験あり。宇宙環境医学の研究者として論文を執筆。現在は、上用賀世田谷通りクリニックにて内科医として勤務しています。

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